第8章 ”受身”形態

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1)”受身”形態
”受身”形態が取る動詞が動詞基(Verb Base)であると仮定し、さらに、「る」が時制「非過去」であると仮定すると、”受身”形態は、/rare/か、これの最初の音韻/r/を取り除いた/are/か、初頭に/o/を追加した/orare/である。第1番目の/rare/は、(1)の場合のように、/RU/動詞を取る場合の”受身”形態で、第2番目の/are/は、(2)と(3)の場合のように、/U/動詞か不規則動詞/s/かを取る場合の”受身”形態で、第3番目の/orare/は、(4)の場合のように、不規則動詞/k/を取る場合の”受身”形態である。
(1a) 食べる /tabe-ru/ 'He will eat it'
(1b) 食べ /tabe/ '... eating it, ...'
(1c) 食べられる /tabe-rare-ru/ 'It will be eaten or is eaten.'
(2a) 読む /yom-u/
(2b) 読み /yom-i/
(2c) 読まれる /yom-are-ru/
(3a) 調査する /tyousas-u-ru/
(3b) 調査し /tyousas-i/
(3c) 調査される /tyousas-are-ru/
(4a) 来(く)る /k-u-ru/
(4b) 来(き) /k-i/
(4c) 来(こ)られる /k-orare-ru/
「る」が時制「非過去」であることは、前の章で議論した。(なお、rareかareかについては、吉村2000のように、”受身”形態はrareで、取る動詞基が子音で終わる場合は、yom-rareがyom-areであるように、子音+子音の列では後ろの子音が削除されると考えると、より一般的に説明できる。しかし、吉村2000の分析では、「される」には、s-rareがs-areとなると予測され、「来られる」には、k-rareが*k-areとなると予測され、この二つを両方とも正しく予測するにはアドホックな音韻規則が必要となるかもしれない。)

2)”受身”形態の品詞:動詞
”受身”形態(たとえば(5a)「食べられる」の「られ」)は、日本語の文法で助動詞と分類されることがあるが、助動詞という分類を認めない文法においては、1)副詞(たとえば(6a))、2)「い」形容詞(たとえば(7a))、3)「な」形容詞(たとえば(8a1)、(8a2))、4)名詞(たとえば(9a1)、(9a2))、5)動詞(たとえば、(10a))のうち、動詞に属すると考えると、以下のように、説明はより簡素になる。”受身”形態の非過去の文の終わりは(5a)のようであり、それが名詞を修飾する場合は、(5b)のように、形態は変わらない。

(5a)    食べられ
(5b)    食べられものが ある。
”受身”形態の非過去の文(5a)に対するその否定形は、(5c)のように「る」を削除して、「ない」をつけ、その過去形は、(5d)のように「る」を「た」に換える。
(5c)    食べられない
(5d)    食べられ
”受身”形態の動詞を修飾する形態は、(5e)のように「る」を「て」に換えるか、(5f)のように「る」を取って、そのままつなげる。
(5e)    食べられ、よかった。
(5f)    食べられ、よかった。
    もし”受身”形態が副詞(たとえば、(6a)のような形態)に属すると仮定したら、副詞「ゆっくり」の語形変化は(6a)から(6f)のようで、たとえば、副詞が、過去であれ、非過去であれ、動詞の様態を表す場合は、(6d)のように、”受身”形態はその形を変えないと予測される。
(6a)    ゆっくり 走る。
(6b)    ゆっくりものが ある。
(6c)    ゆっくりじゃなく 走る
(6d)    ゆっくり 走った。
(6e)    ゆっくり、よかった。
(6f)    ゆっくり、よかった。
ところが、これは、間違った予測である。「食べられる」の対応する過去は無変化形の「食べられる」ではなく、「食べられた」であるからだ。この望まない結論は、”受身”形態が副詞(たとえば、(6a)のような形態)に属すると仮定したことによって導かれ、他の暗黙の仮定から導かれたのではないので、”受身”形態は副詞(たとえば、(6a)のような形態)に属するという仮定が成り立たない、つまり、”受身”形態は副詞(たとえば、(6a)のような形態)に属さないということになる。
    次に、もし”受身”形態が「い」形容詞(たとえば、(7a)のような形態)に属すると仮定したら、「い」形容詞「おいしい」の語形変化は(7a)から(7f)のようで、たとえば、「い」形容詞の過去は「い」または最終音韻を「かった」に換えることにより作られるので、”受身”形態「食べられる」の過去は「食べられかった」などと予測される。
(7a)    おいし
(7b)    おいしものが ある。
(7c)    おいしくない
(7d)    おいしかった
(7e)    おいしくて、よかった。
(7f)    おいし、よかった。
ところが、これは、間違った予測である。「食べられる」の対応する過去は「食べられかった」などではなく、「食べられた」であるからだ。この望まない結論は、”受身”形態が「い」形容詞(たとえば、(7a)のような形態)に属すると仮定したことによって導かれ、他の暗黙の仮定から導かれたのではないので、”受身”形態は「い」形容詞(たとえば、(7a)のような形態)に属するという仮定が成り立たない、つまり、”受身”形態は「い」形容詞(たとえば、(7a)のような形態)に属さないということになる。
    次に、もし”受身”形態が「な」形容詞(たとえば、(8a1)か(8a2)のような形態)か「名詞」(たとえば、(9a1)か(9a2)のような形態)に属すると仮定したら、「な」形容詞「静かな」の語形変化は(8a1)から(8f)のようであり、名詞「公園」の語形変化は(9a1)から(9f)のようであり、たとえば、「な」形容詞と名詞の動詞の修飾形の「で」を取り除いたら、(8f)と(9f)のように、非文法的な形態になるので、”受身”形態「食べられる」の動詞修飾形の「食べられて」の「て」を取り除いた「食べられ」が非文法的な形態であると予測される。
(8a1)    静か
(8a2)    静かである
(8b1)    静かものが ある。
(8b2)    静かであるものが ある。
(8c1)    静かじゃない
(8c2)    静かでない
(8c3)    静かではない
(8d1)    静かだった
(8d2)    静かであった
(8e)    静か、よかった。
(8f)    *静か、よかった。
(9a1)    公園
(9a2)    公園である
(9b1)    公園ものが ある。
(9b2)    公園であるものが ある。
(9c1)    公園じゃない
(9c2)    公園でない
(9c3)    公園ではない
(9d1)    公園だった
(9d2)    公園であった
(9e)    公園で、よかった。
(9f)    *公園よかった。
ところが、これは、間違った予測である。「食べられる」の対応する動詞修飾形「食べられ」は文法的に正しいからである。この望まない結論は、もし”受身”形態が「な」形容詞(たとえば、(8a1)か(8a2)のような形態)か「名詞」(たとえば、(9a1)か(9a2)のような形態)に属すると仮定したことによって導かれ、他の暗黙の仮定から導かれたのではないので、”受身”形態は「な」形容詞(たとえば、(8a1)か(8a2)のような形態)か「名詞」(たとえば、(9a1)か(9a2)のような形態)に属するという仮定が成り立たない、つまり、「な」形容詞(たとえば、(8a1)か(8a2)のような形態)にも、「名詞」(たとえば、(9a1)か(9a2)のような形態)にも属さないということになる。(8a1)と(8a2)か、(9a1)と(9a2)というように「な」形容詞と名詞の場合は、非過去形が二つあるという点も、”受身”形態「食べられる」と異なる。
    次に、もし”受身”形態が動詞(たとえば、(10a)のような形態)に属すると仮定したら、動詞「走る」の語形変化は(10a)から(10f)のようであり、”受身”形態が副詞「ゆっくり」や「い」形容詞「おいしい」や「な」形容詞「静かな」や名詞「公園」であると仮定した場合に予測される語形変化よりも問題が少ない。
(10a)    走
(10b)    走ものが ある。
(10c)    走らない
(10d)    走った
(10e)    走って、よかった。
(10f)    走、よかった。
”受身”形態「食べられる」の過去形は「食べられった」と予測される。この”受身”形態の過去は、間違った予測ではあるが、副詞だと仮定した場合の非過去と同一の「食べられる」、「い」形容詞だと仮定した場合の「食べられかった」より、事実の「食べられた」に近い。また、もし”受身”形態が動詞(たとえば、(10a)のような形態)に属すると仮定したら、動詞の修飾形は、「食べられって」と「食べられり」と予測される。これは、「な」形容詞や名詞と仮定した場合に予測される「食べられて」と非文法的となる「*食べられ」より、事実の「食べられて」と文法的な「食べられ」に近い。これらのことから、”受身”形態は、副詞と仮定するより、かつ、「い」形容詞と仮定するより、かつ、「な」形容詞と仮定するより、かつ、名詞と仮定するより、動詞と仮定する方が予測が事実に近い。(なお、古典語を考えたら、「走りて」と「走り」と、予測され、正しい予測となる。)次のセクションで、「走る」とは異なる動詞の形態類に属すると仮定すると、予測は完全となることがわかる。

3)”受身”形態:/RU/動詞
2)において”受身”形態が、助動詞という分類を認めない文法において、どの品詞に属するかを議論した。答えは、「動詞」であった。次に、”受身”形態は、以下の議論から、動詞の下位形態類/RU/動詞に属すると考えるといい。まず、”受身”形態の動詞「食べられる」が、「走る」や「帰る」と同じ形態類(いわゆる/U/動詞)に属すると仮定しよう。/U/動詞「帰(かえ)る」の語形変化はすぐ下のようである。

(11a)    猫が帰るということはない。
                'It is not the case that the cat will go back home.'
(11b)    猫が帰らないということはない。
                'It is not the case that the cat will not go back home.'
(11c)    猫が帰っ、困った。
                'We got in a trouble since the cat came back home.'
(11d)    猫が帰ります
                'The cat will go back home [Polite Style].'
(11e)    猫が帰りたがっている。
                'The cat wants to go back home.'
もし”受身”形態「食べられる」が/U/動詞に属すると仮定したら、その語形変化は(12a)-(12e)となり、予測は近いが完全とは言えない。
(12a)    ケーキが猫に食べられるということはない。
                'It is not the case that the cake will be eaten by a cat.'
(12b)    *ケーキが猫に食べられらないということはない。
                'It is not the case that the cake will not be eaten by a cat.'
(12c)    *ケーキが猫に食べられって、困った。
                'We got in a trouble since the cake was eaten by a cat.'
(12d)    *ケーキが猫に食べられリます
                'The cake will be eaten by a cat [Polite Style].'
(12e)    *ケーキが猫に食べられリたがっている(比ゆ的使用)。
                'The cake wants to be eaten by a cat.'
「帰(かえ)る」に対して「帰(かえ)らない」なので、「る」を「ら」に換えて、「ない」をつけるので、”受身”形態の「食べられる」の否定形は、(12b)「食べられらない」と予測される。「て」形は、「帰(かえ)る」に対して「帰(かえ)って」なので、「る」を「っ」に換えて、「て」をつけるので、”受身”形態の「食べられる」の「て」形は、(12c)「食べられって」と予測される。丁寧形は、「帰(かえ)る」に対して「帰(かえ)ります」なので、「る」を「り」に換えて、「ます」をつけるので、”受身”形態の「食べられる」の丁寧形は、(12d)「食べられります」と予測される。願望形は、「帰(かえ)る」に対して「帰(かえ)りたい」なので、「る」を「り」に換えて、「たい」をつけるので、”受身”形態の「食べられる」の願望形は、(12e)「食べられりたい」と予測される。予測は近いが完全とは言えない。なお、実際に日本語学習者は、これに類似した間違いをよくする。
    次に、”受身”形態の動詞「食べられる」が、「走る」や「帰る」と同じ形態類(いわゆる/U/動詞)に属すると仮定しよう。/RU/動詞「食(た)べる」の語形変化はすぐ下のようである。
(13a)    猫がケーキを食べるということはない。
                'It is not the case that the cat will eat the cake.'
(13b)    猫がケーキを食べないということはない。
                'It is not the case that the cat will not eat the cake.'
(13c)    猫がケーキを食べて、困った。
                'We got in a trouble since the cat ate the cake.'
(13d)    猫がケーキを食べます
                'The cat will eat the cake [Polite Style].'
(13e)    猫がケーキを食べたがっている。
                'The cat wants to eats the cake.'
もし”受身”形態「食べられる」が/RU/動詞に属すると仮定したら、その語形変化は(14a)-(14e)となる。
(14a)    ケーキが猫に食べられるということはない。
                'It is not the case that the cake will be eaten by a cat.'
(14b)    ケーキが猫に食べられないということはない。
                'It is not the case that the cake will not be eaten by a cat.'
(14c)    ケーキが猫に食べられて、困った。
                'We got in a trouble since the cake was eaten by a cat.'
(14d)    ケーキが猫に食べられます
                'The cake will be eaten by a cat [Polite Style].'
(14e)    ケーキが猫に食べられたがっている(比ゆ的使用)。
                'The cake wants to be eaten by a cat.'
「食(た)べる」に対して「食(た)べない」なので、「る」を取り除いて「ない」をつけるので、”受身”形態の「食べられる」の否定形は、(14b)「食べられない」と予測される。「て」形は、「食(た)べる」に対して「食(た)べて」なので、「る」を取り除いて、「て」をつけるので、”受身”形態の「食べられる」の「て」形は、(14c)「食べられて」と予測される。丁寧形は、「食(た)べる」に対して「食(た)べます」なので、「る」を取り除いて「ます」をつけるので、”受身”形態の「食べられる」の丁寧形は、(14d)「食べられます」と予測される。願望形は、「食(た)べる」に対して「食(た)べたい」なので、「る」を取り除いて「たい」をつけるので、”受身”形態の「食べられる」の願望形は、(14e)「食べられたい」と予測される。これらの予測は正しい。
    以上から、”受身”形態は/U/動詞(たとえば「帰る」)ではなく、/RU/動詞(たとえば「食べる」)と考えるとその語形変化は自動的に導き出される。(さらに、”受身”形態が不規則動詞「する」かあるいは「来る」と同じ類に属するとしたら、それぞれの受身形態はどのようになると予測されるか各自調べよう。)

4)”受身”文の3つの統語・意味パターン
次の(15a)-(21a)のそれぞれの動詞に対応する”受身”動詞は、aの文の出来事と直接関連するものに限れば、どのような節のパターン(特定の格句のパターン)を取るかこのセクションで考える。まず、”受身”動詞の主格句や位置格句が、”受身”が取っている動詞のどんな格句であるかのように解釈されるか見る。
    たとえば、文(15a)「雨が降る」の動詞「降る」に対応する”受身”動詞「降られる」は、文(15a)に直接関係する節のパターンとしては、(15b)「太郎が雨にられる」がある。

(15a)    雨が 降る。
(15b)    太郎が 雨に られる
文(15b)が真であれば、その世界においては、文(15a)も真である。文(15b)で位置格名詞である「雨」は、文(15a)で主格名詞である。文(15b)における「太郎」は、文(15a)の表す出来事には現れていない要素で、文(15b)においては主格名詞である。
    文(16a)「太郎がおはぎを食べる」の動詞「食べる」に対応する”受身”動詞「食べられる」は、文(16a)に直接関係する節のパターンとしては、(16b)「花子が太郎におはぎを食べられる」と、(16c)「おはぎが太郎に食べられる」とがある。
(16a)    太郎が おはぎを 食べる。
(16b)    花子が 太郎に おはぎを 食べられる
(16c)    おはぎが 太郎に 食べられる
文(16b)が真であれば、その世界においては、文(16a)も真であり、かつ、文(16c)が真であれば、その世界においては、文(16a)も真である。文(16b)で位置格名詞である「太郎」は、文(16a)で主格名詞である。文(16b)における「花子」は、文(16a)の表す出来事には現れていない要素で、文(16b)においては主格名詞である。文(16c)で位置格名詞である「太郎」は、文(16a)で主格名詞である。文(16c)で主格名詞である「おはぎ」は、文(16a)で目的格名詞である。
    文(17a)「太郎が犬にドッグフードを与える」の動詞「与える」に対応する”受身”動詞「与えられる」は、文(17a)に直接関係する節のパターンとしては、(17b)「花子が太郎に犬にドッグフードを与えられる」と、(17c)「ドッグフードが太郎に犬に与えられる」と、(17d)「犬が太郎にドッグフードを与えられる」とがある。
(17a)    太郎が 犬に ドッグフードを 与える。
(17b)    花子が 太郎に 犬に ドッグフードを 与えられる
(17c)    ドッグフードが 太郎に 犬に 与えられる
(17d)    犬が 太郎に ドッグフードを 与えられる
文(17b)が真であれば、その世界においては、文(17a)も真であり、かつ、文(17c)が真であれば、その世界においては、文(17a)も真であり、かつ、文(17d)が真であれば、その世界においては、文(17a)も真である。文(17b)で位置格名詞である「太郎」は、文(17a)で主格名詞である。文(17b)における「花子」は、文(17a)の表す出来事には現れていない要素で、文(17b)においては主格名詞である。文(17c)で位置格名詞である「太郎」は、文(17a)で主格名詞である。文(17c)で主格名詞である「ドッグフード」は、文(17a)で目的格名詞である。文(17d)で位置格名詞である「太郎」は、文(17a)で主格名詞である。文(17d)で主格名詞である「犬」は、文(17a)で位置格名詞である。
    次に、文(18a)中の”受身”形態、「殴られ」の「られ」のような意味(日本語学で言われる「被害」の意味)を持つか、それとも、文(19a)中の”受身”形態、「殴られ」の「られ」のような意味を持つ(つまり、「被害」の意味を持たない)か、どちらであるかを見る。”受身”形態の「被害」の意味は以下のようである。
(18a)    次郎が 花子に 太郎を殴られる。
(18b)    花子が 太郎を 殴る。
(18c)    Hanako punches Taro.
(18d)    Hanako punches Taro, and Jiro does not like it/Jiro suffers that.
(19a)    太郎が 花子に 殴られる。
(19b)    花子が 太郎を 殴る。
(19c)    Hanako punches Taro.
(19d)    Hanako punches Taro, and Taro does not like it/Taro suffers that.
文(18a)が真であれば、必ず、文(18b)が真であり、つまり、文(18a)中の主格名詞以外の部分で表される一つの出来事が成立する。さらに、主格名詞の表すものが、それ以外の部分で表される一つの出来事に対して、感情的な関係を持つ、つまり、「被害にあっ」ている。これにより、文(18a)は、(18c)より、(18d)の意味を持つと解釈される。一方、文(19a)が真であれば、必ず、文(19b)が真であるが、文(19a)中の主格名詞以外ではなく、文(19a)全体で表される一つの出来事が成立する。主格名詞の表すものが、それ以外の部分で表される一つの出来事に対して、感情的な関係を持たない、つまり、「被害にあっ」ているという意味がない。これにより、文(19a)は、(19d)より、むしろ、(19c)の意味を持つと解釈される。
    文(18a)のように、主格名詞の表すものが、それ以外の部分で表される一つの出来事に対して、感情的な関係を持つ、つまり、「被害にあっ」ているか、それとも、文(19a)のように、主格名詞の表すものが、それ以外の部分で表される一つの出来事に対して、感情的な関係を持たない、つまり、「被害にあっ」ているという意味がないかは、主格名詞を提題名詞にして、「ことを願った」とした表現を後ろにつけられるかどうかで診断できる。たとえば、文(18a)のような「被害」の意味がある場合は、主格名詞を提題名詞にして、「ことを願った」とした表現を後ろにつけると、(20a)のように、変に(出来事に直接、関わらない人が関わるかのように矛盾のように)聞こえる。
(20)    ?次郎は 花子に 太郎殴られることを 願った。
一方、たとえば、文(19a)のような「被害」の意味がない場合は、主格名詞を提題名詞にして、「ことを願った」とした表現を後ろにつけると、(21)のように、変には聞こえない。
(21)    太郎は 花子に 殴られることを 願った。
    受身の文(15b)は、(22)のように、「被害」の意味を持つ。
(22)    ?太郎は 雨に られることを願った。
文(16b)は、(23)のように、「被害」の意味を持ち、文(16c)は、(24)のように、「被害」の意味を持たない。
(23)    ?花子は 太郎に おはぎを 食べられることを願った。
(24)    おはぎは 太郎に 食べられることを願った。(比ゆ的用法)
文(17b)は「被害」の意味を持ち、(17c)と(17d)はどちらも「被害」の意味を持たない。
(25)    ?花子は 太郎に 犬に ドッグフードを 与えられることを願った。
(26)    ドッグフードは 太郎に 犬に 与えられることを願った。(比ゆ的用法)
(27)    犬は 太郎に ドッグフードを 与えられることを願った。
    以上から、上であげた”受身”動詞の文(15b)、(16b)、(16c)、(17b)、(17c)、(17d)には3つの統語・意味のパターンがある。
(28)    パターン1:
このパターンの場合、”受身”動詞の主格句の表すものは、それ以外の部分で表される一つの出来事に対して、間接的な関係を持つので”受身”動詞の主格句を省いても、主格句以外で表される出来事は、それぞれ、(29)、(30)、(31)のように、描写可能である。
(29)    雨が降る。
(30)    太郎がおはぎを食べる。
(31)    太郎が犬にドッグフードを与える。
(32)    パターン2A:
  • ”受身”動詞の主格句は、”受身”が取っている目的格句を取る動詞(他動詞)の位置格句(間接目的語)であるか、あるいは、目的格句であるかのように解釈される。
  • ”受身”動詞の位置格句は、”受身”が取っている動詞の主格句であるかのように解釈される。
  • 「被害」の意味がない。

  • 例:    (16c)    おはぎが 太郎に 食べられる
              (17c)    ドッグフードが 太郎に 犬に 与えられる
            (17d) 犬が 太郎に ドッグフードを 与えられる。
    このパターンの場合、”受身”動詞の主格句は、”受身”が取っている動詞の目的格句であるか、あるいは、”受身”が取っている目的格句を取る動詞(他動詞)の位置格句(間接目的語)であるかのように解釈されるので、”受身”動詞の主格句を除いたら、出来事は、それぞれ、(33)、(34)、(35)のように、描写されえず、それが必要である。
    (33)    太郎が おはぎを 食べる。
    (34)    太郎が 犬に ドッグフードを 与える。
    (35)    太郎が 犬に ドッグフードを 与える。
    5)”受身”文のもうひとつの統語・意味パターン
    ここで、”受身”動詞の取る統語/意味のパターンには、セクション4で述べた2つに加えて、もうひとつある。まず、文(36a)に対応する文(36d)は、パターンIの例であり、この文は新しいパターンをつくらない。
    (36a)    花子が 太郎の左腕を 洗う。
    (36d)    太郎が 花子に 左腕を 洗われる
    文(36d)は、(37)が変に聞こえるように、「被害」の意味を持つ。
    (37)    ?太郎は 花子に 左腕を 洗われることを 願った。
    太郎が、花子が自分の左腕を洗うという出来事に間接的にしか関わらない。一方、文(38a)に対応する文(38d)は、パターンIの例とはならず、新しいパターンをつくる。
     
    (38a)    花子が 太郎の鼻を 殴る。
    (38d)    太郎が 花子に 鼻を 殴られる
    文(38d)は、文(39)が変に聞こえないように、「被害」の意味を持たない。
    (39)    太郎は 花子に 鼻を 殴られることを 願った。
        文(36d)「太郎が花子に左腕を洗われる」と文(38d)「太郎が花子に鼻を殴られる」との違いは、以下である:文(36)が真であっても、文(40)が真とならないように、その目的格句の所有者に対して、その動詞によって表された行為がなされたと言うことにはならない。
    (40)    花子が太郎を洗う。
    一方、文(38d)が真であれば、文(41)が真となるように、その目的格句の所有者に対して、その動詞によって表された行為がなされたと言うことになる。
    (41)    花子が太郎を殴る。
    つまり、文(38d)は、目的格を二つとり、一方の目的格の名詞句は他方の名詞句の所有者を表すような動詞を受身にした場合と考えられる。
    (42)    花子が太郎を鼻を殴る。


        つまり、この新しいパターンは、パターン2Bとして、以下のようにまとめられる。

    (44)    パターン2B:
    6)日本語文法8
    まず、日本語文法7に、以下に述べるような新しい規則を加えて、日本語文法8を作る。まず、動詞句の規則を加える。目的格を二つとり、一方の目的格の名詞句は他方の関係名詞句の所有者を表すような文を分析できるようにするために、規則14を使う。目的格句(ACCP)と、空を持つ目的格句(ACCP_GAP)と、他動詞(VT)が、この順番で並べば、それは動詞句(VP)である。
     
    (45)    規則14: VP -> ACCP ACCP_GAP VT /*AccP RN-Acc VT*/
    この規則とこれまでの空(GAP)の分析を使って、たとえば、文(46)((42)と同じパターン)は下のように分析される。
    (46)    子どもが やくざを 鼻を 殴る。
    (47)
    TS
    S                                                                           TNS
    NOMP       VP
                    ACCP        ACCP_GAP                    VT
                                    N_GAP    ACC
                                    RN
    kodomo ga yakuza wo     hana             wo          nagur     u
        次に、「被害」の意味を持つ”受身”形態(”Passive I”)は、3つの規則群によって予測される。(48a)ー(48c)の規則145−147のように、「被害」の意味を持つ”受身”形態(”Passive I”)は、それ自身が’(被害など)を被る’(suffer)という意味を持つと分析される。
    (48a)    規則145: SUFFER -> rare /*Passive I*/
    (48b)    規則146: SUFFER -> are /*Passive I*/
    (48c)    規則147: SUFFER -> orare /*Passive I*/
    さらに、(49)の規則136と(50a)と(50b)の規則16−17によって、”受身”形態「rare; are; orare」のSUFFERは、 動詞を目的語として取り、かつ、位置格句(LOCP)を取る他動詞(VTV:Transitive Verb that Takes Verb)であると分析される。
    (49)    規則136: VTV -> SUFFER /*Passive I*/
    (50a)    規則16: VP -> LOCP VP VTV /*Passive I*/
    (50b)    規則17: VP -> LOCP VI VTV /*Passive I*/
    動詞を目的語として取る他動詞(VTV)が取る動詞は、自動詞(VI)か動詞句(VP)かである。これらの規則により、たとえば、文(51)は(52)のように分析される。
    (51)    子どもが雨に降られる。
    (52)
    TS
    S                                                            TNS
    NOMP         VP
                     LOCP    VI    VTV

                                        SUFFER
    kodomo ga     ame ni     hur    are                 ru

    第3、4章で「太郎が友だちに本を借りる」の例で、動詞の主語が、目的語によって表されるものが動詞で表される行為の結果の到着点を表すなら、他動詞の位置格句は、動詞が起こるのと同時、あるいは、前に、目的語で表されるものがが存在する場所を記述すると学んだ。ここで、動作の起こる起点を主語だと考えれば、(52)と分析される文(51)は、(53)、つまり、(54)のような意味を持つと予測される。
    (53)    Some child suffers rain's falling from heaven.
    (54)    It rains, and some child does not like it or is affected by that event.
    この予測は正しい。
        次に、「被害」の意味を持たない”受身”形態(”Passive II”)は、5つの規則群によって予測される。(55a)ー(55c)の規則142−144のように、「被害」の意味を持たない”受身”形態(”Passive II”)は、それ自身は意味を持たず、PASSと分析される。
    (55a)    規則142: PASS -> rare /*Passive II*/
    (55b)    規則143: PASS -> are /*Passive II*/
    (55c)    規則144: PASS -> orare /*Passive II*/
    これは、英語の受身形と同じである。**(56)の規則135と(57)の規則15によって、”受身”形態「rare; are; orare」のPASSは、 動詞句を目的語として取り、位置格句を取り、他動詞であり、かつ、その動詞句は、目的格か位置格の空(VP_ACC/LOCGAP)を持ち、その動詞の主語をその空として解釈されると分析される。***
    (56)    規則135: VTV_INTRANS -> PASS /*Passive II*/
    **
    (57)    規則15: VP -> LOCP VP_ACC/LOCGAP VTV_INTRANS /*Passive II*/***
    **(58)を削除した***)規則13(59a)「VP -> ACCP VT」、「目的格句と他動詞で動詞句である」規則に対応して、その目的格句が空となる規則18(60a)「VP_ACC/LOCGAP -> VT」があり、その動詞句は、規則15によって出てくる他動詞的性質をなくす動詞(VTV_INTRANS)が取る目的格句か位置格句の空を持つ動詞句と分析され、規則14(59b)「VP -> ACCP ACCP_GAP VT」、「目的格句と、空のある目的格句と、他動詞で、動詞句である」規則に対応して、その目的格句が空となる規則19(60b)「VP_ACC/LOCGAP -> ACCP_GAP VT」とその空のある目的格句が空となる規則20(60c)「VP_ACC/LOCGAP -> ACCP VT」があり、その動詞句は、規則15によって出てくる他動詞的性質をなくす動詞(VTV_INTRANS)が取る目的格句か位置格句の空を持つ動詞句と分析され、最後に、規則12(59c)「VP -> LOCP ACCP VT」、「位置格句と、目的格句と他動詞で動詞句である」規則に対応して、その位置格句が空となる規則20(60c)「VP_ACC/LOCGAP -> ACCP VT」とその目的格句が空となる規則21(60d)「VP_ACC/LOCGAP -> LOCP VT」とがあり、その動詞句は、規則15によって出てくる他動詞的性質をなくす動詞(VTV_INTRANS)が取る目的格句か位置格句の空を持つ動詞句と分析される。
    (59a)    規則13: VP -> ACCP VT
    (59b)    規則14: VP -> ACCP ACCP_GAP VT /*AccP RN-Acc VT*/
    (59c)    規則12: VP -> LOCP ACCP VT
    (60a)    規則18: VP_ACC/LOCGAP -> VT /*Passive II*/
    (60b)    規則19: VP_ACC/LOCGAP -> ACCP_GAP VT /*Passive II*/
    (60c)    規則20: VP_ACC/LOCGAP -> ACCP VT /*Passive II*/
    (60d)    規則21: VP_ACC/LOCGAP -> LOCP VT /*Passive II*/
    これらの規則により、たとえば、文(61)は(62)のように分析される。
    (61)    おはぎが 子どもに 食べられる。
    (62)
            TS
            S                                                                                 TNS
          NOMP       **VP***
                         LOCP            VP_ACC/LOCGAP      VTV_INTRANS
                                              VT                          PASS
    ohagi ga        kodomo ni        tabe                          rare                        ru
    文(61)の分析(62)においても、文(51)の分析のように、位置格句は、VP_ACC/LOCGAPの起点で、主語と解釈されるので、文(61)は、(63)のような意味を持つ。
    (63)    Some child eats...
    さらに、意味規則(64)により、文(61)の主格句「おはぎ」は、「食べ」という動詞の目的格句と解釈される。
    (64)    意味規則: **動詞句(VP)の最後の語が、他動性をなくす動詞(VTV_INTRANS)で、目的格か位置格の空を持つ動詞句(VP_ACC/LOCGAP)が最後から2番目の語だったら、動詞句(VP)の主語は、VP_ACC/LOCGAPの目的格か、あるいは、位置格かの空(GAP)であると解釈される。***
    よって、文(61)は、(65)の意味を持つと解釈される。
    (65)    Some child eats ohagi.
    この予測は正しい。
        なお、さらに、日本語文法8(66)は、以下のとおりで、SUFFERの文と受身の文に空(GAP)がある文も分析できるように、規則が導入されている。これらの説明は割愛する。
    (66)    % JG8: Passive
    規則1: initial symbol: TS
    規則2: TS -> TS TNS
    規則3: TS -> S TNS
    規則4: S -> S PLTSTL
    規則5: S -> PP S
    規則6: S -> ADV S
    規則7: S -> TOPP S
    規則8: S -> TOPP S_GAP
    規則9: S -> NOMP VI
    規則10: S -> LOCP NOMP VI
    規則11: S -> NOMP VP
    **規則12を削除した***
    規則12: VP -> LOCP ACCP VT
    規則13: VP -> ACCP VT
    規則14: VP -> ACCP ACCP_GAP VT /*AccP RN-Acc VT*/
    **規則15: VP -> LOCP VP_ACC/LOCGAP VTV_INTRANS /*Passive II*/***
    規則16: VP -> LOCP VP VTV /*Passive I*/
    規則17: VP -> LOCP VI VTV /*Passive I*/
    規則18: VP_ACC/LOCGAP -> VT /*Passive II*/
    規則19: VP_ACC/LOCGAP -> ACCP_GAP VT /*Passive II*/
    規則20: VP_ACC/LOCGAP -> ACCP VT /*Passive II*/
    規則21: VP_ACC/LOCGAP -> LOCP VT /*Passive II*/
    規則22: N -> GENP N
    規則23: N -> TS_GAP N
    規則24: N -> TS N
    規則25: N -> GENP RN
    規則26: N -> TS SRN
    規則27: TS_GAP -> TS_GAP TNS
    規則28: TS_GAP -> S_GAP TNS
    規則29: S_GAP -> VI
    規則30: S_GAP -> NOMP_GAP VI
    規則31: S_GAP -> LOCP VI
    規則32: S_GAP -> NOMP VI
    規則33: S_GAP -> LOCP_GAP NOMP VI
    規則34: S_GAP -> LOCP NOMP_GAP VI
    規則35: S_GAP -> VP
    規則36: S_GAP -> NOMP VP_GAP
    規則37: S_GAP -> NOMP_GAP VP
    **規則38−40を削除した***
    規則41: VP_GAP -> VT
    規則42: VP_GAP -> ACCP_GAP VT /*AccP RN-Acc VT: GAP*/
    規則43: VP_GAP -> ACCP_GAP ACCP_GAP VT /*AccP RN-Acc VT: GAP*/
    規則44: VP_GAP -> LOCP VT
    規則45: VP_GAP -> ACCP VT
    規則46: VP_GAP -> LOCP ACCP_GAP VT /*AccP RN-Acc VT: GAP*/
    規則47: VP_GAP -> LOCP_GAP ACCP VT
    規則48: VP_GAP -> VI VTV /*Passive I: GAP*/
    規則49: VP_GAP -> LOCP_GAP VI VTV /*Passive I: GAP*/
    規則50: VP_GAP -> VP VTV /*Passive I: GAP*/
    規則51: VP_GAP -> LOCP VP_GAP VTV /*Passive I: GAP*/
    規則52: VP_GAP -> LOCP_GAP VP VTV /*Passive I: GAP*/
    **規則53: VP_GAP -> VP_ACC/LOCGAP VTV_INTRANS /*Passive II: GAP*/
    規則54: VP_GAP -> LOCP VP_ACC/LOCGAP_GAP VTV_INTRANS /*Passive II: GAP*/
    規則55: VP_GAP -> LOCP_GAP VP_ACC/LOCGAP VTV_INTRANS /*Passive II: GAP*/***
    規則56: VP_ACC/LOCGAP_GAP -> VT /*Passive II: GAP*/
    規則57: VP_ACC/LOCGAP_GAP -> ACCP_GAP VT /*Passive II: GAP*/
    規則58: VP_ACC/LOCGAP_GAP -> LOCP_GAP VT /*Passive II: GAP*/
    規則59: NOMP_GAP -> N_GAP NOM
    規則60: ACCP_GAP -> N_GAP ACC
    規則61: LOCP_GAP -> N_GAP LOC
    規則62: N_GAP -> RN
    規則63: NOMP -> N NOM
    規則64: ACCP -> N ACC
    規則65: LOCP -> N LOC
    規則66: PP -> N P
    規則67: PP -> TS SP
    規則68: GENP -> N GEN
    規則69: GENP -> PP GEN
    規則70: GENP -> ADV GEN
    規則71: TOPP -> N TOP
    規則72: TOPP -> PP TOP
    規則73: TOPP -> LOCP TOP
    規則74: TOPP -> ADV TOP
    規則75: NOM -> ga
    規則76: ACC -> wo
    規則77: LOC -> ni
    規則78: GEN -> no
    規則79: TOP -> wa
    規則80: P -> de
    規則81: P -> kara
    規則82: P -> ni
    規則83: SP -> to
    規則84: N -> kodomo
    規則85: N -> otoko
    規則86: N -> okaasan
    規則87: N -> isha
    規則88: N -> yakuza
    規則89: N -> josidaisei
    規則90: N -> minna
    規則91: N -> ohagi
    規則92: N -> huku
    規則93: N -> terebi
    規則94: N -> genki
    規則95: N -> ame
    規則96: N -> shuppatu
    規則97: N -> setujo
    規則98: N -> yuukai
    規則99: N -> heya
    規則100: N -> oosaka
    規則101: N -> byouin
    規則102: N -> mono
    規則103: N -> ashita
    規則104: N -> kare
    規則105: N -> sore
    規則106: RN -> gan
    規則107: RN -> kami
    規則108: RN -> ashi
    規則109: RN -> hana
    規則110: SRN -> nioi
    規則111: SRN -> oto
    規則112: RN -> nioi
    規則113: RN -> oto
    規則114: N -> nioi
    規則115: N -> oto
    規則116: ADV -> ashita
    規則117: TNS -> u
    規則118: TNS -> ru
    規則119: TNS -> ita
    規則120: TNS -> ta
    規則121: PLTSTL -> imas
    規則122: PLTSTL -> mas
    規則123: VI -> hukure
    規則124: VI -> nobi
    規則125: VI -> de
    規則126: VI -> siraretei
    規則127: VI -> i
    規則128: VI -> nemur
    規則129: VI -> hur
    規則130: VI -> k
    規則131: VI -> ar
    規則132: VI -> s
    規則133: VI -> shuppatus
    規則134: VI -> bakuhatus
    規則135: VTV_INTRANS -> PASS /*Passive II*/
    規則136: VTV -> SUFFER /*Passive I*/
    規則137: VT -> tabe
    規則138: VT -> ki
    規則139: VT -> mi
    規則140: VT -> tate
    規則141: VT -> atae
    規則142: PASS -> rare /*Passive II*/
    規則143: PASS -> are /*Passive II*/
    規則144: PASS -> orare /*Passive II*/
    規則145: SUFFER -> rare /*Passive I*/
    規則146: SUFFER -> are /*Passive I*/
    規則147: SUFFER -> orare /*Passive I*/
    規則148: VT -> kir
    規則149: VT -> ok
    規則150: VT -> kag
    規則151: VT -> okos
    規則152: VT -> hum
    規則153: VT -> nagur
    規則154: VT -> ais
    規則155: VT -> s
    規則156: VT -> yuukais
    規則157: VT -> setujos