[1]関係節の統語論:
関係節(Relative Clause)は、時制の付いた動詞の節、つまり、定形動詞の(動詞形がfiniteである)節であり、名詞を修飾する。関係節により修飾された名詞を主要名詞(head
noun)という。この分析は、(1)と(2)が非文法的であることを一方に、(3)が文法的に正しいことを他方にした母語話者の判断の対比を予測する。
(1) *大阪に来るのは、おはぎを作って子どもである。分析の予測の詳細は、以下の通りである。意図した「関係節」が、語列(3)では、「作る」で終わり、定形動詞の節であるのに、語列(1)では、意図した「関係節」が、「作って」と、「て」形であって定形動詞でなく、語列(2)では、意図した「関係節」が、「作り」と、現在分詞形であって定形動詞でない。これらのことから、上述した分析は、語列(1)と(2)が文法的に正しくなく、語列(3)は文法的に正しいと予測する。これは、母語話者の判断と一致しており、正しい予測である。(なお、「お子様をお連れの方がいらっしゃった」という文が適切であることとか、「*読んでください本はこれです」という文が不適切であることを、この分析で予測できるようにするには、前の文の「の」や「・・・てください」をどのように分析すればいいか、考えてよう。)
'It is the child making ohagi that will come to Osaka.'
(2) *大阪に来るのは、おはぎを作り子どもである。
'It is the child making ohagi that will come to Osaka.'
(3) 大阪に来るのは、おはぎを作る子どもである。
'It is the child that makes ohagi will come to Osaka.'
[2]関係節と主要名詞の意味論:
関係節はあるものについての性質を記述し、関係節が修飾する名詞が記述する個体は、関係節の表す性質を満たす。こう考えることで、以下の事実を予測できる。文(4)がある世界で真であれば、その世界では、必ず、文(5)も真である。
(4) おはぎを作る子どもが大阪に来る。ところが、この逆は成り立たない。つまり、文(5)がある世界で真であるからといって、その世界で、いつも文(4)が真であるとは限らない。
(5) 子どもが大阪に来る。
(6) 関係節Pと主要名詞Qの列PQは、ある個体が、集合{x | P(x) & Q(x)}の成員であることを示す。つまり、ある個体が、名詞の表す性質を満たし、関係節の表す性質をも満たすということである。ここで、P(x)は、関係節が表す性質で、Q(x)は、主要名詞の表す性質である。これにより、文(4)の関係節の主要名詞「子ども」は、ある個体が集合(7a)(=(7b))の成員であるを意味する。
(7a) {x | child'(x)}さらに、文(4)の関係節+主要名詞「おはぎを作る子ども」は、(7a)(=(7b))を満たすような個体(つまり、修飾される名詞の表す集合の成員であるような個体)が、関係節「おはぎを作る」が表す集合(8a)(=(8b))の成員でもあることを意味する。
(7b) 子どもであるものの集合
(8a) {y | {x | make'(x)(y)} ^ {x | ohagi'(x)} =/= Null Set}つまり、文(4)の関係節+主要名詞「おはぎを作る子ども」は、ある個体が以下のような集合の成員(9a)(=(9b))であることを示す。
where the former argument slot in make'(x)(y) describes the makee, and the latter argument slot in make'(x)(y) describes the maker, ^ means the intersection (between or among the sets), and =/= means 'is not equivalent'
(8b) おはぎを作るものの集合
(9a) {x | child'(x) & {y | make'(y)(x)} ^ {x | ohagi'(x)} =/= Null Set}同分析によるこの予測が、さらに文(4)と文(5)に関連する事実、つまり、ある世界で、文(4)「おはぎを作る子どもが大阪に来る」が真であれば、その世界では、必ず、文(5)「子どもが大阪に来る」も真であるという事実を予測するか見てみよう。ある談話世界(U={a, b, c, d, e})において、子どもである集合が{a,b,c}であるとしよう。つまり、{x | child'(x)} = {a,b,c}。このことは、個体cも、個体dも、個体eも 子どもの集合、{x | child'(x)}の成員ではないことをも意味する。この談話世界で、文(4)「おはぎを作る子どもが大阪に来る」が真であるとしよう。文(4)が真であれば、子どもである個体のうち、少なくとも、ひとりは、必ずおはぎを作り、大阪に来る。たとえば、モデル世界(10)において文(4)は真である。
where the former argument slot in make'(x)(y) describes the makee, and the latter argument slot in make'(x)(y) describes the maker, ^ means the intersection (between or among the sets), and =/= means 'is not equivalent'
(9b) 子どもであり、おはぎを作るものの集合
(10)なぜなら、このモデル世界では、子どもであり、おはぎを作り、大阪に来るという性質を持つ個体が少なくとも一つ、つまり、個体aが、いるからである。文(4)「おはぎを作る子どもが大阪に来る」が、ある世界で、たとえば(10)のような世界で、真であれば、少なくとも一つの個体は、子どもであり、おはぎを作り、大阪に来る。この世界では、その個体が子どもであり、大阪に来るから、文(5)「子どもが大阪に来る」も真である。このようにして、文(4)は文(5)を機械的に含意する。
性質1 性質2 性質3 個体a 子どもである おはぎを作る 大阪に来る 個体b 子どもである おはぎを作る 大阪に来ない 個体c 子どもである おはぎを作らない 大阪に来ない 個体d 子どもではない おはぎを作らない 大阪に来る 個体e 子どもではない おはぎを作らない 大阪に来る
[3]関係節の統語・意味論1:
関係節の主要名詞の関係節中における統語・意味上の働きを見てみよう。関係節の主要名詞は、関係節中で、関係節の空所(=Gap)と同一であると解釈される。なお、節中の空所(=Gap)は、提題文で学んだように、節の動詞の主語か、目的語か、位置格句名詞か、あるいは、主語の疎外できない名詞(IN)の所有格・所属先か、目的語の疎外できない名詞(IN)の所有格・所属先かである。この分析によって、以下の(11a)から(14b)に関係する現象を予測する。もし文(11a)が、ある世界で真であれば、その世界では、必ず文(11b)も真である。
(11a) おはぎを作る男が大阪に来る。文(11a)では、関係節の主要名詞が、関係節の動詞の主語の空所(=Gap)と同一であると解釈されているから、文(11a)が真であれば、文(11a)で関係節が連結している名詞を、関係節の動詞の主語の名詞として挿入した関係節を独立したひとつの文としている(11b)も真であると予測する。この予測は正しい。同様に、(12a)と(12b)、(13a)と(13b)、(14a)と(14b)のそれぞれの現象を正しく予測する。
(11b) 男がおはぎを作る。
(12a) こどもが作るおはぎが大阪に来る。文(12a)では、関係節の主要名詞が、関係節の動詞の目的語の空所(GAP)と同一であると解釈されているから、文(12a)が真であれば、文(12a)で関係節が連結している名詞を、関係節の動詞の目的語として挿入した関係節を独立したひとつの文としている(12b)も真であると予測する。文(13a)では、関係節の主要名詞が、関係節の動詞の主語の所有者であると解釈されているから、文(13a)が真であれば、文(13a)で関係節が連結している名詞を、関係節の動詞の主語の所有者を表す名詞として挿入した関係節を独立したひとつの文としている(13b)も真であると予測する。文(14a)では、関係節の主要名詞が、関係節の動詞の目的語の所有者の空所(GAP)と同一であると解釈されているから、文(14a)が真であれば、文(14a)で関係節が連結している名詞を、関係節の動詞の目的語の所有者の名詞として挿入した関係節を独立したひとつの文としている(14b)も真であると予測する。これらの予測は正しい。
(12b) こどもがおはぎを作る。
(13a) 髪がよく伸びる男が大阪に来る。
(13b) 男の髪がよく伸びる。
(14a) 花子が髪を切った男が大阪に来る。
(14b) 花子が男の髪を切った。
[4]関係節の統語・意味論2:
主要名詞が、関係節中で、動詞の主語か、目的語か、位置格句の名詞か、関係名詞の主語の所有格名詞か、関係名詞の目的語の所有格名詞かであると解釈されるには、これらは関係節で空所(=GAP)でなければならない。空所(GAP)ではなく、たとえば、同一指示の代名詞)であってはならない。これにより、以下の現象を予測する。文(11a)に対応して、(11c)のように、関係節中にそこにあると理解される部分にその名詞の代名詞「その人」を挿入したら適切な文にならない。
(11a) おはぎを作る男が大阪に来る。語列(11c)で、関係節において、主要名詞が主語であると解釈されないのは、主語が関係節中に現れており、主語が空所(=GAP)でないからである。(11a)と(11c)に関する事実ど同様に、上の分析は、(12a)と(12c)、(13a)と(13c)、(14a)と(14c)のそれぞれの事実を同様に予測する。
(11c) *その人がおはぎを作る男が大阪に来る。
(12a) こどもが作るおはぎが大阪に来る。(12c)で、関係節において、主要名詞が目的語であると解釈されないのは、目的語が関係節中に現れており、目的語が空所(=GAP)でないからである。(13c)で、関係節において、主要名詞が主語の所有者・所属先であると解釈されないのは、主語の所有者・所属先が奪格句として関係節中に現れており、主語の所有者・所属先が空所(=GAP)でないからである。(14c)で、関係節において、主要名詞が目的語の所有者・所属先であると解釈されないのは、目的語の所有者奪格句空(=GAP)でないからである。
(12c) *こどもがそれを作るおはぎが大阪に来る。
(13a) 髪がよく伸びる男が大阪に来る。
(13c) *その人の髪がよく伸びる男が大阪に来る。
(14a) 花子が髪を切った男が大阪に来る。
(14c) *花子がその人の髪を切った男が大阪に来る。
[5]関係節と後置詞句:
関係節の主要名詞は、関係節中では、1)これまで述べたような関係節の動詞の空所(=Gap)であると解釈されるか、あるいは、2)空所(=Gap)以外の名詞と、たとえば、関係節の動詞を修飾する後置詞句の代名詞と同一指示であると解釈される。なお、2)の分析には、日本語では代名詞が明示的に表されないこともあるということ(「pro(nominal)-drop」(「代名詞削除」)現象)が関係する。
以下の事実が正しく予測される。 文(15a)と文(15b)の事実<もし文(15a)が、ある世界で真であれば、その世界では、必ず文(15b)も真である>から、一見、関係節の主要名詞は、関係節中で、関係節の動詞を修飾する後置詞句の名詞に当たる部分の空所(=Gap)でもある得ると思われるが、これは、(15c)によって棄却される。
(15a) 花子が子どもの髪を切ったはさみがテーブルの上にある。文(15a)に対応して、(15c)のように、関係節中にそこにあると理解される部分にその名詞の代名詞「それ」プラス後置詞「それで」を挿入したら、文法的には問題ない文となる。 このサブセクションの冒頭に述べた分析を使えば、関係節の主要名詞が後置詞の名詞と同一指示である場合は、その代名詞に当たるものが現れていてもよいと予測され、この予測は正しい。さらに、文(15a)は、文(15c)の代名詞の省略の文であると考えよう。そうすると、文(15c)(この代名詞省略の例が(15a)である)における関係節「花子が子どもの髪をそれで切った」では、節の動詞「切った」の主語、目的語、目的語の関係名詞の所有格のどれも、空所(=GAP)でないので、関係節中では、主要名詞は、これらのどれとも解釈されない。残る解釈の可能性はひとつである:関係節の空所(Gap)以外の名詞、たとえば関係節の動詞を修飾する後置詞の名詞と同一指示でなければならない。この予測は、母語話者の判断と一致し、正しい。
(15b) 花子が子どもの髪をそれで切った。
(15c) 花子が子どもの髪をそれで切ったはさみがテーブルの上にある。
[6]節を取る名詞:例)「におい」タイプ:
文(16a)、文(17a)、文(18a)中のどの名詞「におい」にも、定形動詞の節が連結しているが、これらの節の主要名詞と関連した文法的な働きは異なる。文(17a)と文(18a)との名詞「におい」に連結している節はどちらも関係節であるが、一方、文(16a)の名詞「におい」に連結している節は関係節ではない。
(16a) 花子がおはぎを作るにおいは、昨日のと同じだった。文(17a)では、文(17b)により支持されるように、節が連結する名詞「におい」は関係節中において連結する節の動詞の空所(=Gap)(この場合は、目的語)であると解釈されるが、文(16a)では、(16b)と(16c)により支持されるように、節が連結する名詞「におい」は関係節中において連結する節の動詞のどの空所(=Gap)であると同一であるとも、つまり、「作る」の主語とも目的語とも解釈されない。
(17a) 花子が嗅いだにおいは、昨日のと同じだった。
(18a) 花子が倒れたにおいは、昨日のと同じだった。
(16b) *花子がそのにおいがおはぎを作る。同様に、文(18a)では、文(18b)により支持されるように、節が連結する主要名詞「におい」は関係節中において連結する節の空所(=Gap)以外のもの、たとえば、動詞の後置詞の名詞と同一指示であると解釈されるが、文(16a)では、文(16d)により支持されるように、節が連結する主要名詞「におい」は関係節中において連結する節の動詞の後置詞の名詞と同一指示であるとも解釈されない。
(16c) *花子がおはぎをそのにおいを作る。
(17b) 花子がそのにおいを嗅いだ。
(16d) *花子がおはぎをそのにおいで作る。つまり、文(16a)「花子がおはぎを作るにおいは、昨日のと同じだった」において、名詞「におい」に連結している節において、名詞「におい」は空所と同一であるとも解釈されないし、空所(Gap)でないもの(たとえば、後置詞の名詞)と同一指示であると解釈されない。よって、文(16a)において名詞「におい」に連結している節は関係節ではないということになる。
(18b) 花子がそのにおいで倒れた。
[7]言語理論#8:関係節と、節を取る関係名詞:
日本語言語理論#7に以下規則を加える。規則(23)〜(26)を加え、関係節を含む文を予測する。空所(=Gap)のある定形動詞の文(TS_GAP)と名詞(N)との列は、名詞(N)であるという規則を加え(規則23)、空(=Gap)でない名詞と同一指示の場合の関係節のために、定形動詞の文(TS)と名詞(N)との列は、名詞(N)であるという規則を加える(規則24)。
(23) N -> TS_GAP N %The head noun fills the gap提題文の分析で使った規則は、そのままそっくり使われる。さらに、ふたつの規則を加える。空所を持つ動詞の文(S_GAP)と時制(TNS)との列は、空を持つ時制つきの文であり(規則(25))、空を持つ時制つき文(TS_GAP)と時制(TNS)との列は、空を持つ時制つきの文である(規則(26))。
(24) N -> TS N %The head noun is coreferential with the noun other than GAP
(25) TS_GAP -> S_GAP TNS規則(27)と(28)によって、節を取る関係名詞を含む文を予測する。節を取る関係名詞(SRN)についは、定形動詞の節(TS)と節を取る関係名詞(SRN)との列は、名詞(N)であるという規則(27)、「におい」が節を取る関係名詞(SRN)であるという規則(28)が付け加えられる。
(26) TS_GAP -> TS_GAP TNS
(27) N -> TS SRNなお、「におい」は、文を取らない場合もあるから、規則「IN -> nioi」で、「におい」を疎外できない名詞(IN)としたり、規則「N−>nioi」「におい」で、「におい」を普通名詞としてりする。
(28) SRN -> nioi
(29) 日本語言語理論#8日本語言語理論#8は、語列(31b)(その語列の一つの解釈は(31a)である)に関して、以下のように、正しい予測をする。
なお、日本語言語理論8は、以下のとおりで、SUFFERの文と受身の文に空所(GAP)がある文も分析できるように他の規則が導入されている。これらの説明は割愛する。
(30) %2003 JG8 Relative Clause, and Appositive
規則1:initial symbol: TS
規則2:TS -> TS TNS
規則3:TS -> S TNS
規則4:S -> S PLTSTL
規則5:S -> NOMP VI
規則6:S -> NOMP VP
規則7:S -> PP S
規則8:S -> ADV S
規則9:S -> LOCP S
規則10:S -> TOPP S %TOPP = Topic PP or Topic ADV
規則11:S -> TOPP S_GAP %TOPP = NOUN + TOP; Topic Noun = GAP
規則12:N -> TS_GAP N %The head noun fills the gap
規則13:N -> TS N %The head noun is coreferential with the noun other than any GAP of the verb
規則14:N -> TS SN %The head noun like /nioi/ takes a clause for its complement
規則15:VP -> ACCP VT
規則16:VP -> LOCP VP
規則17:VP -> PP VP
規則18:VP -> ADV VP
規則19:VP_GAP -> LOCP VP_GAP
規則20:VP_GAP -> PP VP_GAP
規則21:VP_GAP -> ADV VP_GAP
規則22:VP -> VP_ACC/LOCGAP VTV_INTRNSTVZ
% VTV_INTRNSTVZ = e.g., PASS, Intransitivizing Transitive Verb with Verbal Complement
規則23:VP -> VP VTV
% VTV = e.g., 'suffer', Transitive Verb with Verbal Complement
規則24:VP -> VI VTV
% VTV = e.g., 'suffer', Transitive Verb with Verbal Complement
規則25:VP_ACC/LOCGAP -> VT % ACC/LOCGAP = OBJECT
規則26:VP_ACC/LOCGAP -> ACCP VT % ACC/LOCGAP = LOCATIVE OF OBJECT
規則27:VP_ACC/LOCGAP -> ACCP_GAP VT
% ACC/LOCGAP is identical to OBJECT
規則28:VP_ACC/LOCGAP -> LOCP VP_ACC/LOCGAP
規則29:VP_ACC/LOCGAP -> PP VP_ACC/LOCGAP
規則30:VP_ACC/LOCGAP -> ADV VP_ACC/LOCGAP
規則31:VI -> LOCP VI
規則32:VI -> PP VI
規則33:VI -> ADV VI
規則34:VT -> LOCP VT
規則35:VT -> PP VT
規則36:VT -> ADV VT
規則37: TS_GAP -> S_GAP TNS
規則38:TS_GAP -> TS_GAP TNS
規則39:S_GAP -> VI % GAP = Subject
規則40:S_GAP -> VP % GAP = Subject
規則41:S_GAP -> NOMP_GAP VI % GAP in S is GAP in NOMP
規則42:S_GAP -> NOMP_GAP VP % GAP in S is GAP in NOMP
規則43:S_GAP -> NOMP VP_GAP % GAP in S is GAP in VP
規則44:VP_GAP -> VT %GAP = Object
規則45:VP_GAP -> ACCP_GAP VT %GAP = possessor OBJECT for double objects
規則46:VP_GAP -> VI VTV % GAP = LOCP when the verb is VTV
規則47:VP_GAP -> VP VTV % GAP = LOCP when the verb is VTV
規則48:VP_GAP -> VP_GAP VTV % GAP is in the verbal complement of the VTV
規則49:VP_GAP -> VP_ACC/LOCGAP VTV_INTRANSTVZ
% GAP is LOCP when the verb is VTV_INTRNSTVZ
規則50:VP_GAP -> VP_ACC/LOCGAP_GAP VTV_INTRNSTVZ
% GAP is in the intransitivized verbal complement
規則51:VP_ACC/LOCGAP_GAP -> VT
%GAP = Object if ACC/LOCGAP = Locative of Object or Locative of Object if ACC/LOC GAP = Object
規則52:VP_ACC/LOCGAP_GAP -> ACCP_GAP VT
%GAP = Object [Possessor]
規則53:NOMP_GAP -> N_GAP NOM
% GAP in NOMP is GAP in Noun
規則54:ACCP_GAP -> N_GAP ACC
% GAP in ACCP is GAP in Noun
規則55:N_GAP -> IN % GAP = Posssessor
規則56:NOMP -> N NOM
規則57:ACCP -> N ACC
規則58:LOCP -> N LOC
規則59:PP -> N P
規則60:TOPP -> N TOP
規則61:TOPP -> PP TOP
規則62:TOPP -> ADV TOP
規則63:VI -> hukure
規則64:VI -> nobi
規則65:VI -> koge %something burns
規則66:VI -> bakuhatus
規則67:VI -> hatarak
規則68:VI -> ir % is necessary
規則69:VI -> tutome
規則70:VI -> shuppatus
規則71:VI -> hair
規則72:VI -> kaer % return home
規則73:VI -> k % come
規則74:VI -> i % exist temporarily
規則75:VI -> ar % exist permanently
規則76:VTV_INTRNSTVZ -> PASS
% PASSive is an example of Intransitivizing Transitive Verb with Verbal Complement
規則77:VTV -> SUFFER
% 'suffer' is an example of Transitive Verb with Verbal Complement
規則78:PASS -> rare
規則79:PASS -> are
規則80:PASS -> orare
規則81:SUFFER -> rare
規則82:SUFFER -> are
規則83:SUFFER -> orare
規則84:VT -> tabe
規則85:VT -> kir % cut
規則86:VT -> ki % wear
規則87:VT -> ais
規則88:VT -> sir
規則89:VT -> benkyous
規則90:VT -> hasir
規則91:VT -> s
規則92:VT -> tukur
規則93:VT -> hum
規則94:VT -> nagur
規則95:VT -> atae
規則96:VT -> ok
規則97:VT -> turetek
規則98:VT -> ire
規則99:VT -> kae
規則100:TNS -> u
規則101:TNS -> ru
規則102:TNS -> ita
規則103:TNS -> ta
規則104:PLTSTL -> imas
規則105:PLTSTL -> mas
規則106:NOM -> ga
規則107:ACC -> wo
規則108:LOC -> ni
規則109:TOP -> wa
規則110:P -> de
規則111:P -> kara
規則112:ADV -> asita
規則113:N -> kodomo
規則114:N -> otoko
規則115:N -> okaasan
規則116:N -> tomodati
規則117:N -> ohagi
規則118:N -> keeki
規則119:N -> ga
規則120:N -> naihu
規則121:N -> huku
規則122:N -> sore %Pronoun
規則123:N -> heya %[location +]
規則124:N -> oosaka %[location +]
規則125:N -> asita
規則126:IN -> kaminoke %[inalienable +]
規則127:IN -> kuse
規則128:IN -> kao
規則129:IN -> ashi
規則130:IN -> nioi
規則131:SRN -> nioi
・意味論8:
1) 主格の格形式は、その補語の名詞句(その他、後置詞句や非定形補文標識句など)の意味(=1項述語)の項位置を埋めて満たす個体が、その格句が修飾する(つまり、それといっしょに連結して文を作る)動詞の意味(=述語)の主語の項位置をも埋めて満たす。・語用論8: 1)提題詞「は」が名詞を取る場合、名詞に焦点(focus)がない。提題句の修飾する句や文のどこかに焦点(focus)があり、提題名詞は、その焦点に対する背景(background)、あるいは、背景の一部となる。提題名詞は文全体の提題(topic)と解釈され、英語では、たとえば、talking about ... と解釈されたり、提題名詞が音声上、非強勢されると解釈されよう。
2) 目的格の格形式は、その補語の名詞句(その他、後置詞句や非定形補文標識句など)の意味(=1項述語)の項位置を埋めて満たす個体が、その格句が修飾する(つまり、それといっしょに連結して動詞句を作る)動詞の意味(=述語)の目的語の項位置をも埋めて満たす。
3) 「に」は、a(=(1))か、b(=(2))か、c(=(25))かのどれか、ひとつの意味を持つ:
3a. 「に」句が修飾する述語(動詞の意味)に目的語の項がある場合:「に」名詞句は、修飾する動詞の記述する出来事において、その目的語が記述するものが存在する場所を記述する。
3b. 「に」句が修飾する述語(動詞の意味)に目的語の項がない場合:「に」名詞句は、修飾する動詞の記述する出来事において、主語が記述するものが存在する場所を記述する。
3c’. 「に」句が、ある特定の受動動詞「借りる」、「受ける」、「聞く」、「教わる」、「習う」、「もらう」、「賜る」、「いただく」、「(r)are/orare」を修飾する場合、「に」名詞句は、目的語が記述する動作が、「が」名詞句が記述する個体の方に、起こるその動作の主語を、あるいは、目的語が記述する個体が、「が」名詞句が記述する個体の方に動くその移動の起点を記述する。
4) 「で」名詞句は、修飾する動詞が記述する出来事が起こる場所を記述する。
5) 提題詞「は」の意味:
a. 提題詞「は」の補語が名詞のとき、提題名詞は、提題句が修飾する動詞の意味(述語)中の空所(GAP)を埋める。
b. 提題詞「は」の補語が後置詞句か、分類詞句か、定形か非定形の補文標識句か、動詞の現在分詞句かのとき、たとえば、提題後置詞句の真偽条件的な意味上の働きは、その後置詞句の真偽条件的な意味上の働きと同じである。
6) 時制付きの文(関係節)が名詞(主要名詞)と連結して名詞をなす場合、主要名詞は、関係節中の空所(GAP)を埋めるか、あるいは、関係節の動詞の項の空所(GAP)ではない代名詞と同一指示である。
7) 時制付きの文が、文をとる名詞(主要名詞、例えば、「におい」)と連結して名詞をなす場合、そのような主要名詞が表す個体は、出来事を項として求めている。
8) 空所(GAP): 文法規則(A ー>B (C))において、ある大きなカテゴリー(A)中の空所(GAP)は、その直属のカテゴリー(BかC)の空所(GAP)と一致する。
9) 本講義では、時制と丁寧形態が意味を持たないと、単純化のために仮定する。つまり、TNSの意味はゼロとして、時制節の意味は、それが取る時制節か時制のない節の意味と同一であると仮定する。時制のない文の意味は、PLTSTLがある文を取る場合は、その分の意味と同一であると仮定する。
10) VTVが補語として取る動詞は、VTVの目的語である。
11) VTV_INTRNSTVZ(動詞を目的語として取り、かつ、その目的語の動詞を自動詞化させる他動詞)は、それをすぐ下位に含む動詞句の主語を、それが目的語として取る動詞句(VP_ACC/LOCGAP)のACC/LOCGAP、つまり、目的語か、あるいは、目的語の位置(間接目的語)の空所と同一とする。
12) VP−> ... VTV_INTRNSTVZにおいて、VTV_INTRNSTVZがPASSであれば、VP(動詞句)の意味は、VTV_INTRNSTVZが取る補語の動詞の意味と同一である。(つまり、たとえば、PASS自体は意味を持たない。)
2)提題詞「は」が後置詞句か、分類詞句か、定形か非定形の補文標識句か、動詞の現在分詞句かを取る場合、その補語である名詞(後置詞句の場合)、非定形あるいは定形の動詞句(定形か非定形の補文標識句の場合)、動詞の現在分詞句が焦点(focus)である。文全体の提題(topic)に焦点があり、‘Talking about [...]<sound focus>, ...’と解釈され、強い対比の意味がある。
(31a) おはぎは、医者の服を着た男が、部屋に 置きました。日本語言語理論#8の統語論は、この語列が時制つきの文であると、(32)のように、予測する。
(31b) ohagi wa isha no huku wo ki ta otoko ga heya ni ok imas ita
(32)GAPを持つ時制つきの文(= TS_GAP)[isha no huku wo ki ta]と名詞(= N)[otoko]が列をなして、名詞(= N)になり、かつ、動詞句VP[isha no huku wo ki]が、GAPのある文(=S_GAP)と分析される。ここでは、この文の主格句がGAPとなっている。さらに、提題句TOPP[ohagi wa]と、GAPを持つ文(= S_GAP)[[isha no huku wo ki ta otoko ga] heya ni ok]が列をなして、文(= S)になり、かつ、[heya ni ok]が、GAPのある動詞句(=VP_GAP)と分析される。ここでは、動詞句の目的格句がGAPとなっている。この予測は、日本語母語話者の判断と一致し、同理論は反証されない。
TS
S TNS
S
TOPP S_GAP PLTSTL
N TOP NOMP VP_GAP
N NOM LOCP VT
TS_GAP N N LOC
S_GAP TNS
VP
ACCP VT
N ACC
GENP N
N GEN
ohagi wa isha no huku wo ki ta otoko ga heya ni ok imas ita
(33) A mank placed ohagim in the room.これは、母語話者の語列(31a)に関する以下のような判断と矛盾しない。文(31a)が真であれば、(34a)ー(34c)のそれぞれの文も真である。
That mank worn clothesj.
Those clothesj belong to a doctor.
(31a) おはぎは、医者の服を着た男が、部屋に 置きました。よって、日本語言語理論#8の意味論の分析は、ある統語構造を与えられた語列に正しい意味を予測し、反証されない。
(34a) 男が 部屋に おはぎを 置いた。
(34b) その男は 服を 着た。
(34c) その服は 医者に 属している。