議論I)位置格の格形式「に」と後置詞「で」との違い
Ia:「で」も、「に」も、どちらもそれがついている名詞句は場所を記述するが、その場所で、1)何が、2)どうするかというふたつの点から、「で」と「に」が統語・意味上、どのような働きをしているかを、(1)ー(6)、(7a)ー(12)を見て、考えよう。
(1) 部屋に 子どもが いる。
(2) 学校に 木が ある。
(3) 子どもが 机に おはぎを 入れる。
(4) 子どもが 植物園に おはぎを あげる。
(5) 台所で 子どもが おはぎを 食べる。
(6) 台所で おはぎが ふくれる。
(7) a. 子どもが 机に おはぎを 入れる。
b. 子どもが 机で おはぎを 入れる。
(8) a. 子どもが 植物園に おはぎを あげる。
b. 子どもが 植物園で おはぎを あげる。
(9) a. その不動産屋は 北海道に 土地を 買った。
b. その不動産屋は 北海道で 土地を 買った。
(10) a. ここに 名前を 書いて ください。
b. ここで 名前を 書いて ください。
(11) a. ブランコが 学校に ある。
b. 運動会が 学校で ある。
(12) 都会で 飲み屋街に 猫が いる。Ib:議論1aで得た結論によって、似たような意味を持つ動詞「勤める」((13a)中)と「働く」((13b)中)とで、前者が「に」を取り、後者が「で」句を取る事実を説明しよう。同じことを(14a)中の動詞「住んでいる」と(14b)中の「暮らしている」も説明しよう。
(13) a. 洋子は スーパーに 勤める。議論II)位置格の格形式「に」がある文では「から」の意味であるのはなぜか
b. 洋子は スーパーで 働く。
(14) a. 洋子は 北海道に 住んでいる。
b. 洋子は 北海道で 暮らしている。
(15) a. 太郎が 次郎に 本を 借りる。さらに、直前の議論で得た分析は、使役の文(17)で、「に」のついた名詞が、使役形態が取っている動詞「走る」の主語になることと、さらに、受身の文(18)で、「に」のついた名詞が、受身形態が取っている動詞「殴る」の主語になることを説明できるか。
b. 太郎が 次郎から 本を 借りる。
(16) a. 太郎が 大阪から 来る。
b. 太郎が 大阪に 来る。
(17) 太郎が 次郎に 走らせる(hasir-aseru)
(18) 太郎が 次郎に 殴られる(nagur-areru)
議論III)位置格格形式「に」が格形式であるかどうか
IIIa:(19a)から(21c)を見て、それぞれの文における「に」句が格句であるかどうかを議論しよう。
(19) a. kodomo ga ohagi wo inu ni ataeruIIIb:(22)から(26)を見て、それぞれの文における位置格形式「に」が格形式であるかどうかを議論しなさい。
b. inu wa kodomo ga ohagi wo ataeru
c. inu ni wa kodomo ga ohagi wo ataeru
(20) a. カーペットを 居間に 敷く。
b.. 居間は カーペットを 敷く。
c. 居間には カーペットを 敷く。
(21) a. toshokan ni hon ga aru
b. toshokan wa hon ga aru
c. toshokan ni wa hon ga aru
(22) a. 太郎が 父に 頼る
b. 父が 太郎に 頼られる(tayor-areru)
(23) a. toshokan ni hon ga aru
b. toshokan ga hon ga aru
(24) a. 太郎が 父に 会う
b. ?父が 太郎に 会われる(aw-areru)
(25) a. kodomo ga ohagi wo inu ni ataeru
b. inu ga ohagi wo atae-rareru
(26) a. 太郎が 花子に 電話を かける
b. 花子が 太郎に 電話を かけられる(kake-rareru)